このレポートは、2020/05に行われたW3C 諮問委員会総会 (W3C 会員限定ページ) 向けに用意されました。 同時に公開された2020/05 W3C 現状 (翻訳はありません) も参照ください。前回のバージョンは2019/09 版活動概要 (英語版)になります。 このレポートの更新版は最新版をご参照ください。 (訳注: 一般向けに原版にはない説明のリンクや追記を入れている部分があります。)
このレポートはすでにウェブで実現されている領域についての拡張や、 ウェブ技術の拡張・強化のための技術革新に関する最近の活動の概要です。 インターネットについてのコア技術の上に構築されたウェブが、科学的な協働や発見を加速しつづける、家族・友人をつなぐ場になる、オンラインで学習し技術を高める手段になる、活発なビジネスを行う、などのツールとなっているということは、W3C コミュニティーによる活動が人間工学的に素晴らしいものであることを示しています。
34 個のワーキンググループと 10 個のインタレストグループ によるウェブ標準・ガイドラインや解説文書の作成により W3C の使命が遂行されています。 団体全体で–250個の仕様–にわたる多くの活動は、全体を通して均質な GitHub 上のワークスペースにより 良質な監視と管理 の元で遂行されています。
ウェブ上でのプライバシーが重大な問題になる中、COVID-19 の流行により、多くの人がウィルス拡散防止のために社会的距離をとることが要請されており、仕事や連絡をウェブ上で行うようになって来ています。
2020年初頭から、全世界が今も続く大きな課題に直面しています – 全世界的な COVID-19 流行です。 社会的距離の重要性を重視し、W3C では人々の必要とすることを優先し、 すべての出張を中止とし、ウェブ標準を作るというこのコミュニティーでの最も重要な仕事を 続けるため 完全リモートでの運用 を行っています。
ウェブはこの状況下で重要になる基盤の一つであり、我々の仕事であるプラットフォームの拡張と誰にでも使えるようにするための活動は重大なものです。物理的会議ができないことやその他の状況により活動は遅くなっていますが、ほとんどのプロジェクトは継続して活動しています。
ウェブは継続的に進化しており、いくつかのグループでは仕様をその時点のそのままで公開することを検討しています。 これは"evergreen recommendations" や "living standards" と呼ばれる、レビューや特許検証を行いながらも、個別機能ごとに継続的に開発 (と保全)することを目的とするものです。
W3C 諮問会議、W3C プロセス改善コミュニティーグループ、W3C チームでは、 W3C プロセス文書の更新提案について検討を進めてきました。 これには、 RECや CR の更新を簡単に行えるようにする、W3C 仕様開発において "Living Standard" に基づく運用を可能にする、 といった変更を現状と同じレベルのレビューと品質保証の元で行えるようにするものです。 この変更による仕様開発への影響についての詳細な解説もあります。
Living Standard の導入により W3C 特許ポリシーにも拡張が必要になります。 W3C 特許と標準インタレストグループ (PSIG) では、既存ポリシーに必要最低限の変更のみを行うという基本方針のもとで作業を加速させ、勧告候補のスナップショット(特許調査用草稿)に対する特許調査の導入を行うことで、安定した信頼がおける特許ポリシーの運用を維持したままでのW3C 特許ポリシーの更新提案を、いくつかの検討点を残しながらも提示しました。
一般にも公開されているこれらの提案のレビューは5/31で終了です。 コメントに基づいた追加の変更を行って、正式な諮問委員会でのレビュー・承認を2020年6月予定で行う方向です。
W3C では将来のウェブ標準をいいものにするために、 コミュニティーの考えをもらういろいろな方策を行っています。 これらには、会員との間の議論、他の標準化団体との議論、 335 のコミュニティーグループ の数千人の参加者の活動、W3C ワークショップがあります。 これらからさまざまな良い提案がなされています。 W3C 戦略チームでは将来性のありそうな話題を探し出し、 一般からの参加を集めています。
ワークショップ では新規領域でのコラボレーションを育成するために、コミュニティーにて プレゼンテーション、パネルディスカッション、分科会、そして廊下での雑談などのセッションを行います。 オンライン会議への変更の状況下で、開催形態の変更や日程変更もありますが、 分散型のオンライン会議がよりアクセシブルな全世界からの参加が可能なものになると信じています。 開催予定と計画中のワークショップには以下のものがあります:
最近開催したワークショップ
"Strategy Funnel" はスタッフによる新領域の可能性の探索について示しており、 インキュベーション と 評価 から、新規標準化グループの 設立 までを俯瞰することができます。GitHub プロジェクトでの漏斗 (Funnel) 表示では新規領域についての議論が"カード"として並び、通常は左から右へカラムの間を進んでいきます。 ほとんどのカードは探索から始まり、 設立や漏斗の外へ動いていきます。
特にインキュベーションが始まったものについて、一般からの情報提供はどの段階でも歓迎です。 それにより W3C がどの領域を標準化するに値するかを判断する助けになり、その領域の環境についての評価や、 標準化作業に参加する団体の特定や、実情に合った内容で設立趣意書を作成することにも役立ちます。 継続的なフィードバックは標準化作業全体の高速化に寄与します。
前回の活動概要報告以降で、 W3C では以下の多数のグループの設立などを行いました:
W3C のウェブペイメント標準により事業者にとってフロント・開発共に低コストなウェブどこでも同じである、統合された決済のユーザ体験を実現します。ユーザは情報を保存・再利用可能になり、オンライン決済をより速く正確に完了できるようになります。最近の更新は:
ウェブは世界共有の出版プラットフォームです。出版がウェブから受ける影響はより大きくなっており、 またウェブが出版に与える寄与もより大きくなっています。
Publishing@W3C において特に興味を持たれているものは、 体裁とレイアウト、アクセシビリティー、可用性、可搬性、流通、保管、オフラインアクセス、オンデマンド印刷、 そして信頼性のある相互参照性です。また、グループには幅広い出版コミュニティーが参加しており、 旧来の"商業"出版社、ebook システム開発者に加え、オーディオブックの出版社、論文誌や教育出版、 司書研究者やブラウザ開発者も入っています。直近の成果としては:
W3C における EPUB の将来と出版の新たな方向性の検討結果から、以下のような組織変更を行いました:
ウェブはモバイルでのオープンプラットフォームです。音声通信サービスとネットワーク設備の事業者は長らくウェブ技術の展開において重要な位置に居ました。 ウェブプラットフォームの発展に伴いより豊富な機能を持つことで、既存サービスを新しいユーザやデバイスに対して、そしてより拡張された機能を提供できるようになり、新規や革新的なサービスの提案に繋がっています。
WebRTC は全ての繋がっているデバイスをコミュニケーション端末にすることでコミュニケーション事業全体を再定義し、音声・動画通信をどこでも、どのネットワークでも実現し、事業者が顧客に繋がる機会を大いに増加させます。WebRTC はさまざまなオンライン通信や共同作業に欠かせない機能を提供します。
WebRTC ワーキンググループ は WebRTC 1.0 (と関連するメディアキャプチャーとストリームの仕様) の勧告化に向けて活動を続けています。当初の 2019 年末予定からは遅れましたが、相互運用性や問題の解決はうまく進んでおりこの数か月での勧告化を目指しています。
それに加えて、グループでは WebRTC 拡張のユースケース (別名 WebRTC NV) の第一版を公開し WebRTC 1.0 が完了した後に注力する予定にしており、これは議論中の次期 WebRTC ワーキンググループの設立趣意書の基礎となっています。
Web とネットワークインタレストグループは最初の対面会議を 2019 年9月の TPAC で開催し、引き続いて電話会議を行っています。
このグループでは、2つの主要議題について集中して議論を行っています:
メディアとエンターテイメントはユーザが没入可能な体験を実現するメディアに関連した話題と機能を串刺しで追跡します。HTML5、TTML と TTML プロファイル、WebVTT、は標準化された音声・ビデオとキャプションをウェブにもたらしました。それ以降の標準化はウェブをメディアコンテンツとその付随物を提供可能な洗練されたプラットフォームよすることを目標とし、まだ実現されていない、環境に応じたストリーミングやコンテンツ保護などの機能をウェブ上のビデオにもたらすことを目標としています。現在の目標は:
Timed Text ワーキンググループはウェブの字幕の標準化について活動を続けています。TTML2 とインターネットメディアのサブタイトルと字幕 (IMSC) 向けの TTML プロファイル 1.1 の標準を 2018 年末に公開してから、2020年3月にTTML IMSC 1.2 勧告候補を公開しました。このバージョンでは TTML2 の文字のみと画像のみのプロファイルを規定しています。その当時の実情を反映して策定された TTML IMSC 1.1 との互換性を保ちながら、SMPTE #image 拡張などの SMPTE ST 2052-1:2010 "Timed Text Format (SMPTE-TT)" で定義された拡張を実現できるものになっています。TTML IMSC 1.2 による機能と拡張についてその一部分を選択することで、TTML IMSC 1.2 準拠のファイルを SMPTE2052-1 準拠にすることも可能です。
このグループでは、文字起こしの作成、録音された音声としての再生や発音システム、音声混合などのワークフローを実現できるような音声用字幕に向けた TTML プロファイルについて活動を始めました。
実際のところ、ウェブブラウザは TTML でなく WebVTT を実装しています。WebVTT にない高度な機能を実装するために、ウェブメディアプレイヤーやアプリケーションはキューを独自 JavaScript で実装する方法を選択することもあります。事実上、これは表示された字幕がユーザスタイルシートや画像埋め込み機能などの下位プラットフォームからの機能を活用できないことを意味します。Media & Entertainment インタレストグループ (MEIG) ではこの領域に一般的な解決策をもたらす TextTrackCue 拡張の議論を行っています。
古典的字幕から離れると、ユーザがリアルタイムで入力したコメントや注釈が特定の時点に動画の上を流れていく、いわゆる弾幕と呼ばれる機能を持ったビデオ共有サービスが数多くあります。MEIG はこの機能についての相互運用性のある機能要求の取りまとめや技術的不足点について活動しています。
VR/AR 環境での字幕の描画は表示側 (3D でどこに字幕を表示するか、ユーザの動作に追随するかどうか、ユーザが他のところを見ているときに 360 度ビデオ内の字幕のソース位置をどう表示するか) と配信側 (字幕を相互運用性のある字幕ファイルとしてどのように記述するか) の両方に環境特有の機能が必要になります。Immersive Web コミュニティーグループでは 360 度ビデオにおける字幕のユースケースと WebXR での字幕表示に関する要件について活動しています。並行して Immersive Captions コミュニティーグループでは、異なる仮想メディア (AR, VR, ゲーム)における字幕の利用、有効化、表示設定に関する最良慣行の検討を行っています。
Media ワーキンググループはクライアントサイドのメディア処理とウェブでのプレイバック機能の開発と改良を目的に 2019 年中ごろに開始しました。これには次のような API の標準化が含まれます:
Media ワーキンググループは、広告挿入の実装の改善に向けたコーデック変更機能などを含む Media Source Extensions (MSE) 仕様の改訂版や、セッションの録画機能の追加などの Encrypted Media Extensions (EME) 仕様の改訂版に取り組んでいます。
メディア時系列イベントのユースケースと要求項目の取りまとめを受けて、特に MPEG-DASH emsg in-band イベント向けに、ウェブプラットフォームに時系列メタデータを実装するために DataCue プロポーザル (datacue) が開始されました。
Second Screen ワーキンググループでは Open Screen Protocol 標準化作業に着手しました。これは、QUIC ベースのネットワークプロトコルで、ブラウザとデバイス間で表示 API とリモートプレーバック API を相互運用可能な形で実現するためのものです。Open Screen Protocol は同じローカルネットワーク経由でつながっているブラウザとデバイス間をつなぎます。HTML media エレメントについてのリモートプレーバックや、他のデバイスへのメディアデータの送出を開始するための URL をブラウザが表示することを可能にします。
デバイス間の相違を減らすための補完的な活動があります。一つは、デバイスがある時点でのウェブプラットフォームといった共通の技術標準に基づくようにすることです。Web Media APIs コミュニティーグループでは、CTA WAVE プロジェクトが作成時点での主要ブラウザで実装されている Web API の年次スナップショットを出しています。
Media & Entertainment インタレストグループでは、ハードウェアが一度に一つのビデオしかデコードできないような状況下でのプレイバックといった、Web メディア API を採用する民生用電子機器における実際の制約についての情報収集を始めました。
アプリケーションのデバイス間での利用可能性の改善の他の方策として、性能の差異について状況を公開するというものがあります。Media Capabilities と CSS Media Queries は、利用可能コーデック、ビデオ解像度、色空間といったメディア関連機能のデバイスにおける実装状況を利用可能にする仕様の良い例です。Web Performance ワーキンググループでは、ウェブアプリケーションがタイミングデータの取得を可能にする仕様を開発しており、各種の動作の間に消費された時間を解析する機能を提供します。メディア環境を特に目標とはしていませんが、(Navigation Timing、Resource Timing、User Timing、Server Timing といった)仕様により、実際のデバイスで動作しているアプリケーション上でのパフォーマンスが監視可能になり、ユーザ体験の品質を測定することができます。
仮想現実 (VR) や拡張現実 (AR) アプリケーションを実現するハードウェアが近年一般向けに利用可能になり、 新しい機会や挑戦が可能になる没入型コンピューティング環境が提供されるようになりました。 没入型ハードウェアと直接やり取りができる機能は、ウェブがこの環境で市民権を得るために重要です。
Immersive Web ワーキンググループは WebXR Device APIの策定のために活動しています。グループでは、機能ごとの開発速度が異なることから、仕様を独立して管理されるモジュール (core API、AR モジュール、ゲームパッドモジュール) に分離しました。並行して Immersive Web コミュニティーグループは Immersive Web の将来において重要となるであろう次世代機能について活動しています。
W3C では VR とアクセシビリティーの境界領域における要求とその恩恵についてのワークショップ (Inclusive XR) を2019年11月にシアトルで開催し、既存・将来の VR/AR 体験をよりアクセシブルにする可能性について追及しました。ワークショップでの主要議論は (詳細は完全な報告書をご覧ください):
下敷きになる技術は W3C と Khronos グループといったいくつかの標準化団体にわたって議論され、育成されています。これには、Immersive Web ワーキンググループ、Timed Text ワーキンググループ、Khronos glTF ワーキンググループなどが含まれます。
3D は仮想体験の基盤です。GPU for the Web コミュニティーグループでは、WebGPU 仕様について議論しており、これはウェブにおいて GPU ハードウェアの機能を利用するための WebGL より現代的な API を提供し、ネイティブの (Vulkan、Direct3D 12、Metal といった) GPU API の共通領域を効率的に提供します。
2019年に設立された Web and Networks インタレストグループでは、より良い性能やリソース活用の実現のために (5G の新機能といった) ネットワークの可能性をウェブアプリケーションで活用するための方法を探っています。このグループでは、特に、ウェブアプリケーションに可能な限りスムースなメディアプレイバック体験を提供可能にする、ネットワーク品質監視や推定方法について活動しています。
W3C では秒以下の低遅延なメディア配信方法の探求と標準化も行っています。WebRTC は安定し、いくつものウェブブラウザで実装されており、多数のビデオ会議システムで利用され、クライアントデバイスへのライブ配信にも活用されています。この上で、QUIC 上の WebSocket に似た API である WebTransport API の提案により、アプリケーションが複数または一方向のストリーム、非順序配送、非信頼通信などを利用可能となります。ウェブアプリケーションにメディアエンコーダ・デコーダを公開する WebCodecs API 提案と合わせて利用することで、ウェブにおける新しい効率的なライブストリームメディアを実現できるようになるでしょう。
W3C は、WebTransport ワーキンググループの設立趣意書の事前告知を公開しています。
W3C では上記以外にもメディアに直接や間接に関連する技術の議論と標準化を行っています。例えば、2019年6月のウェブゲームに関する W3C ワークショップ (報告書も参照ください) では、低遅延入力処理やマルチスレッドサポートなどの実時間処理におけるメディア制作やストリーミングにも適用可能な領域についても議論しました。ウェブにおけるメディア技術のロードマップには、メディアアプリケーション・サービスを構築するのに利用可能なウェブ技術がリストされています。
Media & Entertainment インタレストグループ は、メディア関連の技術についての議論やウェブにおけるメディア関連機能の進捗を追跡するための W3C における主要な場所です。上述の項目以外にも、このグループではウェブにおけるメディア技術に関するユースケースや要求についての調査を開始しています。
W3C Automotive ワーキンググループは、車両情報サービス仕様 (VISS)、現在の車両でのサービス、他に利用されているものなどからの実世界での経験を元に、車両向け高機能アプリケーションのエコシステムを作成することを目標に活動しています。
提示する標準により、エンジン温度、燃料・充電レベル、走行距離、タイヤ圧などの車両のすべての情報を共通して扱う方法を提供します。数千に及ぶ異なるデータ項目となる全ての車両情報へのアクセスを可能にし、さらに自動運転やドライバー補助技術と電装装備などの高度な運転情報のサポートも目指します。
車両自体で動作するアプリケーション、 (車載音楽システムの載る) "ヘッドユニット"や、他のデバイスが車両情報にアクセスできるようになります。またクラウドにあるサービスに車両情報への間接的なアクセスを提供します。
フォルクスワーゲンによる VIWI 提案によるデータモデルを基礎とし、このグループでは VISS の後継について、車両情報や、位置ベースのサービス・メディア・通知・情報キャッシュなどの、 他の車載向け要求に同様の方式を適用する方策について議論しています。このグループでは、まだ名称は決定していないながら "Gen2" の初期プロトタイプを作成しています。
Automotive and Web Platform ビジネスグループは W3C での運送関係の活動の育成を行っています。車両情報をクラウドに転送することの可能性と挑戦、そしてそこでの利用について注力しています。
BMW と EURECOM は車両とその解析で利用されるデータモデルの上のオントロジー (VSSo) を作成し、車両を W3C Web of Things (WoT) 上で記述することを可能とするとともに実証としての概念的なデモをいくつかの場所で行っています。EURECOM は W3C Auto ビジネスグループへ VSSo を持ち込むこととしています。
このビジネスグループでは、次のグループとリエゾン関係を結びました:
幅広い輸送の中でどの情報が主要な要素なのかを見極めるためにデータ先導型の活動を行うことから、このビジネスグループはより広い視点を反映することを目的として W3C Automotive and Transportation ビジネスグループに改名し再出発します。このグループは輸送についてのオントロジーの調整と車両信号のオントロジーの構築に注力します。また、車両内アプリケーションの最良慣行についても活動し、Miniapps コミュニティーグループに着目するとともに、車両データを利用することで答えが出るであろう実世界での課題に対しての実例となるグラフサーバを作成します。
W3C の Web of Things は、分断された技術スタックの橋渡しを行い、デバイス間連携や大規模運用を可能にするために設計され、分断された Internet of Things のさらなる可能性の実現や相互運用性を提供します。
Web of Things により既存の IoT エコシステムに対し提供者のコストとリスクが削減可能となり、複数のデバイスや情報サービスを組み合わせたアプリケーションにより付加価値を提供します。スマートホーム、スマートシティー、工場、農業、健康サービスなど、様々な領域に価値をもたらします。
Web of Things ワーキンググループは最近最初の Web of things 標準を完成させました:
このグループは対象とする領域の拡張とより深い活動を目指して継続します。例えば、安全な方法での Things の利用、特定の利用目的や特定の技術に対するサポートのための相互運用性のあるプロファイル、新しいプロトコルや位置・デバイス制作者などの追加のメタデータの標準化のためのボキャブラリー追加、Oauth2 中のやり取り、 PoP トークンや ACE のサポートといった拡張されるセキュリティー機構へ安定的に対応できるセキュリティスキーマ、相互運用性を最大化する関連性についての仕様、中央のインフラに依存しないデバイスによる自己記述的な標準化された検出方式、Things Description のテンプレートの改善、などです。
Web of Things インタレストグループでは他の標準化団体や産業上の連盟と、標準化前の段階でのアイデア交換について連携を模索しています。2つのコア領域でリエゾン関係が進行中です:
HTML ワーキンググループは DOM 仕様の2019年6月のスナップショットを勧告候補としました。これは、WHATWG とのコラボレーションにおける初めての成果となります。また、DOM 仕様の勧告化作業が完了するまで、HTML 仕様について2019年7月版についてのレビューを延期します。
このグループでは、年1度の DOM (6月のスナップショット基準)と HTML (12月のスナップショット基準)についての活動を目標としています。(訳注: HTML WG では HTML 仕様と DOM 仕様についての勧告化作業を並行して行わない、つまり片方の完了まで他方については停止する、こととしています。)
CSS は開かれたウェブプラットフォームの重要な要素です。CSS ワーキンググループは大きく二つの CSS ユーザから要求を取りまとめています: 出版業界とアプリケーション開発者です。前者はページ組のサポートと高度なフォントの取り扱い、後者は高度 (かつ高速な!) スクロールとアニメーションに 関する要求が大きいです。
CSS は現実には 100 近くの仕様の集大成となっており、モジュールとして認識されています。CSS の現状は年1回更新されるスナップショットとして提供されます。このグループでは CSS 仕様のすべての定義についての索引も提供しています。
前回のこの文書以降、CSS ワーキンググループは 13 の文書 (作業草案、勧告候補) を提示し、その中には勧告となった CSS Writing Modes Level 3 があり、ウェブにおける文章の並びを縦横選択できるようにし、行中の文字の方向も設定できるようにする仕様となっています。
SVG はオープンウェブプラットフォームの中でも重要な幅広く利用されている技術の一つです。SVG ワーキンググループではいくつかの SVG 2.0 についての問題について活動していますが、仕様策定を完了させるリソース不足状態となっています。
Web Audio ワーキンググループは最近設立趣意書を更新し、ほぼ完了している Web Audio API についての作業の完了と、Web Audio API 2.0 の作業を継続しています。新規機能については、Audio コミュニティーグループで議論されており、Audio ワーキンググループと月1回の定例会議を行っています。
仕様の第1版はすでにすべてのブラウザで実装されており、ブラウザでの統合音声を実現します。音声操作は、モジュール化された音声操作要素をつなぐ形の、音声ノードにより行われます。 異なるチャネルレイアウトを含む複数音源もサポートされます。モジュールデザインにより動的にはたらく複雑な音声機能の作成に自由度がもたらされました。
Web Performance ワーキンググループはアプリケーションの動作をパフォーマンスの観点で測定・改善するための方法を提供するユーザエージェントの機能と API の実現を目標としており、15 個の仕様について活動しています。
このグループでは、高精度タイマーのレベル2仕様を提示しました。また、拡張されたパフォーマンスのために WICG での Scheduling API や is-input-pending などのプロポーザルについて時間を費やしています。
WebAssembly ワーキンググループによる WebAssembly Core 仕様が昨年12月に W3C 勧告となり、HTML、CSS、JavaScript に続き、WebAssembly はウェブでの4つ目の言語となり、ブラウザでのコード実行に利用されています。
WebAssembly は安全で可搬な、ウェブブラウザを含む現代的な実行環境における効率的な実行と小さいサイズでのコード表現を実現するために設計された言語です。その核となる WebAssembly は、ウェブでの高効率アプリケーションを実現するような仮想的命令セットで、さまざまな環境下で動作可能です。WebAssembly にはウェブブラウザや独立システムとしての実装などといった複数の実装があり、動画・音声コーデック、画像や 3D 、マルチメディアやゲーム、暗号処理、可搬型な言語実装などといったアプリケーションを対象としています。
WebAssembly は読み込まれたページをネイティブ環境にコンパイルされたコードとして実行する仮想マシンと実行環境として、ウェブの効率と電力消費を改善します。言い換えると、WebAssembly はネイティブに近い効率、最適化された読み込み時間、そしてもっとも重要と思われる既存コードをコンパイル可能とすることを実現します。ウェブページではコードの他の部分をダウンロード中でも実行を開始できます。ネットワークと API アクセスは JavaScript ライブラリを介して行い、セキュリティーモデルは JavaScript のものと同じになります。
要求収集と言語開発が行われているワーキンググループと、それに対応するコミュニティーグループでは、次期バージョンの仕様にどの領域の機能を入れるかについての議論を進めています:
ブラウザでのテストはウェブの発展のために重要です:
Browser Testing and Tools ワーキンググループでは WebDriver version 2 の最初の作業草案を公開しました。 この機構はユーザエージェントの内部観察や制御を可能にするリモート制御機構として働き、プラットフォームや言語に依存しない形で外部プロセスからウェブの動作をリモートで操作する手法を提供します。
このグループでは、WebDriver の双方向プロトコルの標準化にも取り組んでおり、Chrome Devtools Protocol (CDP; Chrome Debugging Protocol とも呼ばれる)などの既存の仕様と似た機能を提供できる予定です。
2014年から W3C は WHATWG や全ての主要ブラウザも参画する、ウェブプラットフォームに関するクロスブラウザのテストスイートを構築するための協調したオープンソースプロジェクトを行っています。直近の進捗は:
この1年でウェブにおけるデータの標準化においていくつかの重要な成功を達成しました:
データは、特にIoTやビックデータの隆盛を受けて、すべての組織にとって重要性が増しています。W3C は20年にわたり開発が続けられたデータに関連する成熟し広い範囲の標準を持っており、 将来目標として開発者にグラフデータやナレッジグラフについて扱いやすい仕様を提供し、産業向けに供給とバリューチェーンとの水平統合と工場からオフィスまでの垂直統合の両方に提供していく予定です。
Linked Data は対象についての名前のように URI を利用するためのもので、それらの URI を詳細情報取得や 他のデータにリンクとして格納するためのデリファレンスとして利用可能です。 ウェブ上では減ることがない公開の Linked Data が増えており、データを利用・提供するデータサービスも同様です。W3C では、AI と機械学習の分野についてデータ関連の標準化と利用機会の拡大に向けて会員からの情報収集に力を入れています。 開催予定の W3C Workshop on the Web and Machine Learning (Web と機械学習に関する W3C ワークショップ)では、機械学習をよりよく利用可能にするオープンウェブプラットフォームの拡充に注目しています。
古典的なデータアクセスは、表形式データベース (SQL/RDBMS)、カンマ区切りデータ (CSV) ファイル、 PDFや表計算形式に埋め込まれたデータなどに注力していました。現在、ノードとそれらの間のラベル付き直接リンクで構成 されるグラフデータへの移行が起こっています。グラフデータは:
W3C では RDF を基盤として、幅広い領域におけるボキャブラリーを構築する作業を W3C を含めた場所で行っています。Graph Data に関するワークショップ(レポート)に続き、ユースケースや要求項目を含めたビジネス要求を収集し、また標準化作業を調整し他の組織とのリエゾン関係を構築するための、Graph Standardization ビジネスグループの設立に向けての支持を募集しています。
Decentralized Identities (DIDs) と Verifiable Credentials は密接に関連しています: 暗号により検証可能な特性、Verifiable Credentials による各種の記述の同定には、暗号による検証が主要機能であることから DID が最適の方法であることです。両方とも W3C Credentials コミュニティーグループで検討されてきました。W3C ではこのコミュニティーグループから将来的にワーキンググループとして議論されるより多くの仕様が提案されると考えています。
証明書は日常的に利用されています。例えば、運転免許証は車両を運転可能なことを証明し、学位は教育レベルを保証し、政府発行のパスポートは国をまたぐ旅行に必要になります。このような証明書、特にデジタル版の証明書は、各種サービス、ユーザ間での操作、ワークフローをウェブ上で実施するのに本質的に重要なものになります。そういった証明書は暗号論的に安全で検証可能でなくてはならず、プライバシーにも配慮し、それらを利用するアプリケーションの柔軟性や長期安定性のために非集権的な形で管理されることが必要です。
Verifiable Credentials ワーキンググループ (旧 Verifiable Claims ワーキンググループ)は2019年秋に、 多数の異なるアプリケーション間におけるデジタル証明書の大規模運用についての基本を提供する Verifiable Credentials Data Model 1.0 および Verifiable Credentials Use Cases を W3C 勧告として提示しました。
デジタル識別子はウェブやそれ以外での各種サービスの実装に、相互連携するアプリケーションとデータのウェブの実装の両方の面で必須です。各種アプリケーションでの利用を考えると、識別子は簡単に生成可能で、非集権的で、永続し、解決可能で、暗号による検証が可能でなければなりません。(Web URL、ISBN、ORCID 番号、メールアドレス、UUID など)数々の識別子スキーマではそれらのいくつかの要求を実現可能ですが、すべてを実現するものはありません。
Decentralized Identifier ワーキンググループ は、関連した DID 文書を持つ URI スキーマでデジタル識別子を実現しようとしています。どのような利用者でも証明を検証可能で、個人情報を交換でき、サービス情報を受け渡せる暗号化された情報を含む JSON 形式の文書と、さまざまな分散型台帳や github などのウェブストレージ、IPFS などに保管可能な方法です。このグループではすでに DID Identifiers v 1.0 と DID Use Cases and Requirements の作業草案を公開しています。
すべてのセキュリティーに関する仕様の一覧 • すべてのプライバシーに関する仕様の一覧
プライバシー・セキュリティー分野にとっては、Privacy コミュニティーグループの設立と Privacy インタレストグループ (PING) での重要な新規活動、Improving Web Advertising ビジネスグループの始動など、活発な期間となりました。
プライバシーとセキュリティー - 人権と自由権に不可欠なもの - は Web Consortium の活動において長らく重要とされてきています。例えば、認証技術の開発により弱いパスワードやフィッシングなどの攻撃の脅威を減らすことによるウェブセキュリティーの改善などが上げられます。しかしながら、ブラウザフィンガープリンティング、偽情報の拡散、などのオンラインの脅威といった、個人データの不正利用やオンラインでのトラッキングなどが問題となってきています。これらは緊急かつ難しい問題です。ユーザが検閲なしに安全に利用可能なウェブを手助けするための議論が始まっています。
すべての仕様の一覧 • 国際化に関する教育コンテンツ一覧 • 仕様開発者向けチェックリスト • 多様な言語を利用可能にする活動の一覧 • 国際化イニシアティブ
世界人口のうち英語を話せる人は9億人程度ですが、オンライン情報の50%以上がいまだに英語だけのままです。ウェブで利用が困難な言語の利用者はますます軽んじられ締め出されていくことでしょう。ウェブによる経済的、教育的、また民主的な利点を享受できず、しかもその層の参加が得られないことでウェブの潜在的な可能性を世界全体まで伸ばせないことになります。
Web Consortium では Internationalization Activity (i18n) をウェブが真に'世界中の'ものになるために1998年に立ち上げました。全世界の利用者にとってウェブで様々な言語が利用できて本当に動作するようにするために、言語の専門家、ウェブサイトデザイナ、開発者、ベンダーといった活発にウェブを進化させる活動を行う人々の協力が必要です。Web Consortium の Internationalization Activity では、ウェブで利用可能な世界中の言語の組版に関する言語マトリクスを作成しています。全世界で利用されている言語がウェブで利用可能となったとき、全ての言語コミュニティーをつなぐことができるようになるでしょう。
現在のプロジェクトの活動概要はレーダーで見ることができます。
Internationalization initiative では、W3C の基礎的経費での活動範囲を超えた参加者の増加と国際化活動のための追加のスポンサー獲得を行っています。言語対応活動、開発者サポート、ウェブ作成者サポートの3つの主要分野での参加者を求めています。
日本語と中国語の組版タスクフォースでは定期的な会合を続けており、文書の更新を行っています。日本語組版処理の要件については修正と校正を含む(英語・日本語での)更新版文書をまもなく公開予定です。また、ギャップ分析についても活動中です。
アラビア語、東南アジア諸語、インド諸言語のタスクフォースも活動しています。また、ヨーロッパやアフリカの諸言語についての議論を行うグループも形成しつつあります。このあと4-5か月でそれらのグループが活動を開始することを目標とし、参加者や会員によるサポートを求めています。これらのグループにより、Arabic, Persian, Japanese, Chinese, Amharic, Tigriña, Hindi, Marathi, Tamil, Bengali, Punjabi, Lao, Khmer, Thai, Javanese, Georgian, Dutch, Hungarian などの言語でのギャップ分析と組版処理の要件の文書が作成されています。これらについて、言語マトリクスで現状のまとめを見ることができます。
より詳細についてはウェブでの組版処理の実現状況の解析をご覧ください。この分野でのタスクフォースと、作成された文書については進行中の言語を利用可能にする活動の概要をご覧ください。
その他の直近のニュースは:
Internationalization ワーキンググループでは、CSS、WHATWG、WebPlatform、WAI、Web Publishing、Web of Things、JSON-LD を含む他のワーキンググループに対して仕様のレビューや助言を提供する活動を続けています。
HTML & CSS 記述技術 (既存文書一覧も参照)に加え、新規の学習用資料が追加されました:
すべての仕様の一覧 • WAI の翻訳版 • アクセシビリティーの基礎 • デジタルアクセシビリティーのビジネスケース
2006年に全ての障碍者が人権と基本的自由を享受できるようにするために国連で障害者権利条約 (CRPD) が締結されました。代表者会議ではウェブとデジタル出版を含む情報へのアクセスを基本的人権と定義しています。ウェブを含むデジタルアクセシビリティーは全ての人が平等にアクセスし、機会を得、参加するための鍵となります。
ウェブサイトやツールが正しく設計され作成されていれば、障碍を持つ人も利用でき、個人、産業、社会も利益を享受できます。1997年に設立された Web Consortium の Web Accessibility Initiative (WAI) では技術仕様、指針、技法を作成するとともに、認知や実装を進めるためのアウトリーチや学習用資料などの補助資料を提供してきました。WAI のWeb Content Accessibility Guidelines (WCAG) はウェブアクセシビリティーに関する権威のある標準仕様として参照され、世界中のいくつもの政府に参照されています。
しかしながら、ウェブの複雑さが増し、デジタル出版や仮想環境がウェブに載るなどの技術の発展に伴い、それらの技術におけるアクセシビリティーの実現が加速的に重要となってきました。Web Consortium の関与なくては障碍を持つ方々が取り残されていきます。
Web Accessibility Initiative では WAI の資金提供者と後援者の追加の支援の下、 W3C の全ての人のためのウェブのため、またアクセシビリティー関連の活動を協調したものとし、W3C の活動領域全体に貢献しています。最近の活動は:
The Accessibility Guidelines ワーキンググループ (AG WG) の最近の活動は:
WAI 関係者は標準間の協調についても活動し、EN 規格 EN 301 549 を通じてを含む世界の標準との連携をとっています。中国国家標準の更新も完了しています。
ARIA ワーキンググループでは、ARIA ロードマップに従って ARIA の成果物の更新を続けています:
ほとんどの仕様ではアクセシビリティーの観点からの検討が必要です。FAST チェックリストも参照ください (より詳細なガイドも利用可能です)。
ウェブ標準開発とウェブ開発者間のより密接なフィードバックループを実現するため、また広いコミュニティーからの参加を即すため、W3C デベロッパーリレーションでは次のような活動を行っています:
たくさんのウェブユーザが英語が基本である W3C の文書に対する翻訳版 を参照しています。W3C はコミュニティーによる、特に仕様書に対して、さまざまな言語で無料で幅広い利用者に対して 利用可能になるように公開している、継続的なこれらの貢献に感謝します。 貢献するには ページから翻訳活動に参加する方法を見ることができます。
多数の組織や標準化団体 (SDOs) とのリエゾンと連携関係は W3C にとって重要で: